久々に更新。
本のコーナーです。
「簡単に、単純に考える」
羽生善治
例によって、羽生さんのビジネス書です。
前回紹介した「決断力」との違いは、
こちらの方は対談集となっている点。
羽生さんが各章毎に様々な著名人と対談をし、
その内容を口語調のまま編集がまとめたという内容です。
第一章はスポーツジャーナリストの二宮清純さんとの対談。
様々なスポーツに見識が深い二宮さんとの話では、
羽生さんをトップアスリートになぞらえての表現が多く、
野球、柔道、ボクシング、相撲等、
一流選手がどう一流足り得ているのかという原則を羽生さんの将棋に当てはめる事で、
競技としての将棋、スポーツに通じる物を浮き彫りにしようという姿勢が見て取れます。
又、スポーツ界の戦術的な進歩や、各スポーツの普及による競技状況の変貌にも触れ、
そこから将棋の時代に伴う進歩や競技状況の行く末まで話が広がり、
一競技の選手としての羽生善治の姿が垣間見れます。
第二章は元ラグビー日本代表監督の平尾誠二さんとの対談。
平尾さんはどうやら戦略的なラグビーを提唱している人らしく、
ラグビーのゲームの作り方と将棋の局面の進め方をなぞらえて、
勝負に勝つ方法について掘り下げて行きます。
テーマとしては勝負としての共通点から将棋とラグビーをみて、
その共通点と相違点から勝負師としての羽生さんの戦略論をみようという物だと思います。
又、一選手としても活躍した平尾さんの語りからは、
集中力やモチベーションの問題等、対局に向かう時の盤外での羽生さんの調整方法等にも話は及び、
盤外を含めた広い意味での勝負師としての羽生善治の姿が見れるのでは無いでしょうか。
第三章は人工知能、ロボット工学の世界的権威の金出武雄さんとの対談。
金出さんとの話ではコンピュータ将棋に関した話題が多く、
これから強くなって来るコンピュータ将棋の行く末と、
人工知能としてのコンピュータ将棋の思考方法の理論が語られていきます。
コンピュータが将棋の指し手を選ぶ方法論と羽生さんの局面毎の思考方法が対比され、
「どの様に局面を受け取るか、どの様に指し手を読むか」という羽生将棋の方法論が非常に分かり易く語られていきます。
ここで見れるのは「知の探究者」としての羽生さんの姿でしょう。
全体的な感想としては、
前回の「集中力」と非常に内容が被っています。
どうやらこの対談集の内容を、羽生さんが個人的にまとめて自分の文章にしたのが「集中力」の様。
「簡単に、単純に考える」と「集中力」どちらか一方を読んでいれば、もう一方はわざわざ読む必要は無いかも知れません。
「集中力」の方が羽生さん書下ろしだけに文章はまとまっているのですが、こちらの方が対談形式で読み物としても面白く、羽生さんだけでは無く対談相手の考えも同じ位伺える内容なので、
個人的にはどちらかというと「簡単に、単純に考える」がオススメだと思います。
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