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【2024年04月28日06:26 】 |
簡単に、単純に考える
久々に更新。
本のコーナーです。kantanni.jpg

「簡単に、単純に考える」
羽生善治

例によって、羽生さんのビジネス書です。
前回紹介した「決断力」との違いは、
こちらの方は対談集となっている点。
羽生さんが各章毎に様々な著名人と対談をし、
その内容を口語調のまま編集がまとめたという内容です。

第一章はスポーツジャーナリストの二宮清純さんとの対談。
様々なスポーツに見識が深い二宮さんとの話では、
羽生さんをトップアスリートになぞらえての表現が多く、
野球、柔道、ボクシング、相撲等、
一流選手がどう一流足り得ているのかという原則を羽生さんの将棋に当てはめる事で、
競技としての将棋、スポーツに通じる物を浮き彫りにしようという姿勢が見て取れます。
又、スポーツ界の戦術的な進歩や、各スポーツの普及による競技状況の変貌にも触れ、
そこから将棋の時代に伴う進歩や競技状況の行く末まで話が広がり、
一競技の選手としての羽生善治の姿が垣間見れます。

第二章は元ラグビー日本代表監督の平尾誠二さんとの対談。
平尾さんはどうやら戦略的なラグビーを提唱している人らしく、
ラグビーのゲームの作り方と将棋の局面の進め方をなぞらえて、
勝負に勝つ方法について掘り下げて行きます。
テーマとしては勝負としての共通点から将棋とラグビーをみて、
その共通点と相違点から勝負師としての羽生さんの戦略論をみようという物だと思います。
又、一選手としても活躍した平尾さんの語りからは、
集中力やモチベーションの問題等、対局に向かう時の盤外での羽生さんの調整方法等にも話は及び、
盤外を含めた広い意味での勝負師としての羽生善治の姿が見れるのでは無いでしょうか。

第三章は人工知能、ロボット工学の世界的権威の金出武雄さんとの対談。
金出さんとの話ではコンピュータ将棋に関した話題が多く、
これから強くなって来るコンピュータ将棋の行く末と、
人工知能としてのコンピュータ将棋の思考方法の理論が語られていきます。
コンピュータが将棋の指し手を選ぶ方法論と羽生さんの局面毎の思考方法が対比され、
「どの様に局面を受け取るか、どの様に指し手を読むか」という羽生将棋の方法論が非常に分かり易く語られていきます。
ここで見れるのは「知の探究者」としての羽生さんの姿でしょう。

全体的な感想としては、
前回の「集中力」と非常に内容が被っています。
どうやらこの対談集の内容を、羽生さんが個人的にまとめて自分の文章にしたのが「集中力」の様。
「簡単に、単純に考える」と「集中力」どちらか一方を読んでいれば、もう一方はわざわざ読む必要は無いかも知れません。
「集中力」の方が羽生さん書下ろしだけに文章はまとまっているのですが、こちらの方が対談形式で読み物としても面白く、羽生さんだけでは無く対談相手の考えも同じ位伺える内容なので、
個人的にはどちらかというと「簡単に、単純に考える」がオススメだと思います。
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【2009年08月10日16:27 】 | | コメント(0) | トラックバック()
火目の巫女
himemiko.jpg真面目に本を語る第四弾。

「火目の巫女」
杉井光

です。

始めに、この本は別にオススメでは有りません。
では何故わざわざ載せたかというと、私のライトノベル読書デビュー第一作だからです。
だので、この本は私が読んだ数少ないライトノベルの代表として紹介させて貰います。

読んだ事は無いものの、ライトノベルという分野には前々から関心を持っていました。
どうも私はこういうアニメ文化に対する憧れが強いらしいです。でも、わざわざ読んでみる機会も無く、何だか面白そうなメディアだなと思いつつ、その実態は知れぬままという、そんな状態が続くとますます面白そうに思えてしまうのが人情という物。
そんなある日、YOUTUBEでライトノベルが原作の「涼宮ハルヒの憂鬱」というアニメを視聴。これが割と面白かったので、たまたま見付けた外国の英語版「涼宮ハルヒの憂鬱」の原書ページを読んでみました。
これがなかなか面白かった。
現代風に分かり易く書かれたSF物語という感じで、英語版だという事もあってか、余りアニメ色も感じなかったので、これを機会に他のライトノベルも読んでみようと思ったのが、この「火目の巫女」となります。

一冊しか読むまいと思っていたので、一話完結型の有名ライトノベルレーベルの入選作で、自分の感性に合いそうな話のを選んだのが本作。
この本は、実際に読んでみるまで「ライトノベルなる物とはいかなる物か」という思いで相当色々な期待をしていました。
空想物語的な話を読む事も少ないので、そういう意味でも期待は大きく膨らみます。

そして読んでみた内容なのですが、
うーん。
唸ってみるしか無い感じでした。
多分本作がそんなに悪い訳では無いのでしょうが、やはり私にはライトノベルは向かないのかなという印象。

本作の内容に移りましょう。
ストーリーは以下の様な物。

古代日本に似た雰囲気のある国では日々化生という炎の化け物が跋扈(ばっこ)していた。
この国では代々霊力を持った女性が「火目」という役職に付き、都の櫓より放った炎の弓で化生を倒すしきたりとなっている。
主人公の伊月は自分の村を化生に滅ぼされた恨みから、火目見習いとして弓の修練に励む毎日。
火目候補は伊月の他に二人。
おしとやかな盲目少女の佳乃とエリート天才幼女の常和である。
いづれ一人のみが火目として選ばれる日が来るのを知りつつ、仲良く修練施設で暮らす三人であったが、
火目が選ばれるその日、都を震撼させる事件が起こる。
その時、火目と化生、そしてこの国にまつわる残酷な真実が明かされるのであった。

きっとこのストーリーを見て面白そうと思う人も居るに違いない。
私もそう思いました。
でもやはりこういうのは漫画的に描かれても私みたいな人間には駄目ですね。
ライトノベルの「ライト」というのはどの部分にあてられているのか分からないけれど、本作を読んだ限りでは軽くしているのは文体とかだけでは無い様。

萌え系で始まったと思われた女の子三人の前半部分が、
後半部分では一人は国の為にいぶり殺され、一人は化け物に取り付かれて死ぬまで地下に幽閉されるという。
普段小説で感じるのと別の意味で心に何か残す物は有ったものの、
「ライトノベル」というメディアに物珍しさから期待した目新しさみたいな物は私には感じ取れませんでした。
でも未だ期待は残っているので、
又機会が有れば別のライトノベルに挑戦したいと思っています。

このブログの読者でライトノベル好きな人が居たら、是非コメント欄にオススメを書き込んでみて下さい。
【2009年07月21日09:48 】 | | コメント(1) | トラックバック()
孫子
sonshi.jpg結構読者居る様なので真面目に書きます、
本のコーナー第三段。

「孫子」 海音寺 潮五郎

です。

歴史小説と言えば、
司馬遼太郎、吉川栄治位しか分からないのが私です。
歴史自体は好きなのですが、前に司馬遼太郎の小説、「燃えよ剣」を読んだ時に、どっと疲れてしまったので、以後、歴史物は敬遠して来ました。
「燃えよ剣」は新撰組の副長である土方歳三が主人公の物語です。
タイトルからしても、主人公がズバズバ斬りまくって血路を開いていくという分かり易い物語になりそうなのに、読んでみると、主人公の周りで繰り広げられる物語は文章中の三分の一有るかどうかで、
残りの文章は、当時の歴史的背景や、習慣の説明、著者の歴史学者的な見解で埋め尽くされているという物。その上、その説明は物語の途中で「そういえば」と著者が思い出したかの様に必要に応じて挿入されるので、まるで自動ヘルプナビゲーション機能をオフ出来ないWINDOWSソフトの如く、その疲れ加減は尋常では無かったです。
以来、歴史物は敬遠していたのですが、後で歴史小説好きの知り合いから聞く所によると、
歴史小説家にはそれぞれ作風が有り、特に司馬良太郎の作品は学者的な記述が多いので初心者向けでは無いとの事。
となると他の作者の物ならば、と思い手を伸ばしたのがこの「孫子」です。

孫子という著名な人物は歴史上には二人居るそうです。
中国の有名人達、老子、孟子、孔子等に見られる様に、「子」というのは尊称の様な物で、
孫子の場合は「孫」の一字が苗字となります。
二人の孫子はそれぞれ「孫武」(そんぶ)「孫臏」(そんびん)と言い、
孫武が初代孫子で、有名な「孫子の兵法」を書いたのもこの人。
孫臏の方は孫武の何世代か後の子孫であって、
どちらも兵法者として有名であったという事は変わり無い様です。

さて、今回読んだこの本はどちらが主人公だという話ですが、
両方が主人公でした。
内容は、前半が孫武編、後半が孫臏編と分けられており、両方の人物伝と、それぞれの時代背景等を楽しめます。

孫武編においては、冴えない戦略マニアのオッサンである孫武が、
中国史でも有名な大物の野心家武将、伍子胥(ごししょ)に見出され、「先生」として無理やり軍師に祭り上げられ、
最終的に中国の小国であった呉を大軍団に育て上げ、中国一の強国であった楚を破った後、戦に嫌気が指して引退するまでの話が語られており、
孫臏編においては、有名軍師である孫武の孫として生まれた孫臏が、共に兵法について学んだ親友の龐涓(ほうけん)に裏切られた為に、膝切りの刑にあって両足を失い、
復讐の為に龐涓の敵国に取り入り軍師となって、龐涓が率いる軍を策略合戦で打ち破って復讐を果たすという話の流れ。

結局読み物としては、中国史そのものが面白いと思われて、ストーリー自体楽しんで読める物でした。
作者の海音寺潮五郎さんという人は、1901年生まれという明治生まれの作家さんで、歴史小説の元祖みたいな存在の大家であるそう。
明治生まれだから司馬遼太郎の10倍読みにくくて難しい内容になりそうな物なのに、語り口調が学者的では無く、昔話でも語る様に分かり易い文章なので、10倍読み易かったです。
日本の卑弥呼の時代は中国史では三国志の時代。
孫子の時代は三国志よりも未だ前の時代で、歴史的資料も少ない筈なので、
面白おかしく書かれている小説のどこからどこまでが史実なのかは分かりませんが、
やはり歴史小説初心者の私にはこれ位の小説が良い様です。
又歴史小説を読んでみようという気にさせてくれたという意味で、個人的には読んで良かった小説と思います。
【2009年07月18日15:26 】 | | コメント(3) | トラックバック()
本を読む本
honwoyomu.jpg真面目に本の感想を書こう第二段は、
M.Jアドラー C.V.ドーレン 外山 滋比古 槇 未知子
「本を読む本」
です。

内容は本を読む事について書かれた物。
徹底してどう本を読むかとか、本の読み方テクニックとかについて掘り下げられています。
そんな本読むだけ時間の無駄だと思われそうですが、
この本は有る意味凄かった。

先ず本の読み方を語る前に、「本とは何か」という様な定義からして、この本の突込みは半端ではなく、
「人類が作り上げた知的に洗練された一個の文化の一つの完成形」の様な扱いで本という物を扱っています。

そして、その洗練された「本」という物から何かを得ようとするには、相応に洗練された高度なテクニックが必要であるとし、そのテクニックの基礎となるのが、本書が提唱する「積極的読書」という物。
積極的読書とは、受け身で読書をせず、自ら理解しようと著者の意を汲み取ろうとする読書姿勢。
本文中ではキャッチボールに例えられ、
「ボールを受けるという行動は決して受身の行動ではなく、受け手にはキャッチをするという積極的な行動が必要である」
という風に語られています。
読書とは著者の意図を汲み取る作業であり、幾ら良い球を投げられても、受け取る技術が下手で有れば、得る物は又少ない。という話。

積極的読書の定義以降は、テクニック論という形で、そこから更に発展させたレベル別の読書術が語られており、
最後は、最終的に読書が目的とする物は、人間の精神の成長であるという文章で締めくくられています。

終始テクニック論という形で語られているにも関わらず、相当に哲学的な内容でした。

日本の読書力は年々低下しているという話が良く聞かれますが、
テレビなんかで折れ線グラフ見せられても、何か実感が沸かないもの。
でもこういう本を読んでみて改めて「自分は今まで読んだ本の内容を如何程汲み取れていたか」と考えてみると、相当自分にとっても差し迫った問題の様な気もして来ました。

いかにも有り難そうな本を読む気になって、読書によって求めている物がこの本の言う様に「精神の成長」なのであるのなら、先に900円出してこの本読むのも良いかも。

ブログに載せるには変な物ばかり取り上げてきましたが、今回ばかりは良い物を紹介した様な気がします。

イヤー 本って ホンッとに いいものですねー それでは皆さん
サヨナラ サヨナラ サヨナラ
【2009年06月16日19:18 】 | | コメント(2) | トラックバック()
決断力
そろそろまともなブログらしい記事がやって来ました。
本のコーナーです。
今回紹介するのは、
羽生善治著、「決断力」です。

この本は迷った。
谷川浩司の「集中力」とこちらとどちらにしようかなと、
書評を色々見た所、どちらも本のテーマや大体のつくりは同じという事で、こちらの方にしました。

さて、内容ですが、この本はビジネス書として出されている様です。
でも読んだ感想は、この本の内容をビジネスに直接生かせる人は、きっと超一流で「ビジネス界の羽生善治」とか呼ばれそうな人に限られそうです。

全体的に書かれている内容は、著者を取り巻く将棋の世界を広い面から語った物。
将棋の盤面に向かう時の気持ちや、現代の将棋に対する考え方、将棋界の風潮等、
書かれている内容はどれも将棋を指す人には興味深そうな事が語られており、
将棋に限らず勝負事や、集中して頭を使う物になら他の事にも応用出来そうな、著者ならではの生活レベルから構築された勝負術を正直につづっています。

そういう訳で、
ネットで将棋を指していてよく居る、「どうやったら強くなれますか」とか色々な事を高段者に聞いて回りまくる人、
そういう人は、どうせ「簡単な詰将棋を毎日解け」とか「棋譜並べをしろ」とか決まり切った答えを待つよりは、686円出してこの本を読む方が収穫する物が多い様に思います。

でも、この本は一般ビジネスマンに薦めて良い物なのだろうか。
それだけは非常に疑問に思う次第。
本中の各章毎にテーマに沿った事が語られ、所々で将棋の事をビジネスの出来事等になぞらえて、むやみやたらとスケールの大きい話になっているのですが、
どうも将棋の世界と他の世界の話の繋げ方が無理やりに見えてしまい、
将棋等の勝負事と無関係な人がこの本を読んでも、
空手家、大山倍達が宮本武蔵を読んでその気になり発奮した程度の意味でしか効果が無さそう。
【2009年06月15日20:29 】 | | コメント(1) | トラックバック()
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